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よくわかる介護の話
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高齢者が退院後に安心して過ごすための生活の工夫とリハビリに役立つ運動

病気やケガの治療を終えて自宅に戻られた時、「これからどのように過ごしていけばよいのだろう」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。退院直後は体力や筋力の回復に時間がかかり、疲れやすさを感じるのも自然なこと。焦らず、ゆっくりと体調を整えていきたいですね。

退院後の生活は新たなスタートであり、適切な工夫と無理のない運動を取り入れることで、安心して日々を過ごすことができます。当事者の方はもちろん、支える家族の皆さまにも役立つ情報をお伝えします。

退院後の生活で気をつけたい基本ポイント4つ

  • 退院後は「回復途中」だと意識する
  • 生活環境の見直しをする
  • 生活リズムを整える
  • 医師やケアマネジャーの指示は共有・記録する

では、ひとつずつ解説していきます。

退院後は「回復途中」だと意識した生活が大切

退院したからといって、すぐに以前と同じ生活に戻れるわけではありません。体力や筋力の回復には時間がかかります。焦らず、ゆっくりと体調を整えていく気持ちで過ごすのが何より大切です。

「もう大丈夫」と思いがちですが、実際には回復の途中段階にあると理解し、無理をしない生活を心がけましょう。体調の変化に注意し、疲れを感じた時は休息を取るようにしたいですね。

生活環境の見直し

自宅での安全な生活を送るために、住環境を見直してみましょう。退院後は体力の低下等もあり、特に転倒防止は最優先課題です。

  • 階段や段差への手すりの設置
  • 滑りやすい場所への滑り止めマットの配置
  • 足元を照らす照明の確保
  • 不要な家具や物の整理

これらの対策により、安心して移動できる環境を整えられます。小さな段差でも転倒のリスクとなるため、慣れ親しんだ自宅であっても改めて安全性を確認しましょう。

食事・睡眠・排泄などの生活リズムを整える重要性

規則正しい生活リズムは、体力回復の基盤となります。食事は栄養バランスを考慮し、消化の良いものから始めて少しずつ通常の食事に戻していきます。睡眠は十分な時間を確保し、昼夜のメリハリをつけて体内時計を整えましょう。

排泄についても、朝食後の排便、就寝前の排尿など、生活にあわせた習慣化が理想ですが、最初はなかなか難しいかもしれません。時間を見計らって、トイレに誘うなど工夫しましょう。基本的な生活機能を安定させることで、より快適な日常を送ることができます。

医師やケアマネジャーからの指示を共有・記録する

退院時に受けた指示や注意事項は、家族全員で共有し、記録に残しておきましょう。服薬管理、食事制限、運動の可否など、専門家からのアドバイスを正確に理解し実践すれば、回復への近道となります。

記録をつければ、体調の変化や改善の様子を客観的に把握でき、次回の受診時にも有用な情報となります。

基本的な準備が整ったら、次は日常生活に取り入れられる軽い運動について考えてみましょう。

高齢者が退院後「無理なく続けられるリハビリ・軽い運動」

日常生活に取り入れやすいリハビリ的運動

椅子に座ったままできる体操は、安全で効果的なリハビリ運動の代表例です。

椅子での体操例

  • 座った状態での足首の回転運動
  • 膝の曲げ伸ばし
  • 肩甲骨を寄せる動作
  • 深呼吸を伴う腕の上げ下ろし

椅子に座ったままできる運動は、テレビを見ながらでも行えるため、習慣化しやすいのが特徴です。
1回5〜10分程度から始め、体調に応じて時間を調整しながら続けるといいですね。無理をせず、気持ち良いと感じる範囲で行いましょう。

ストレッチや関節をほぐす簡単な動作の紹介

筋肉の緊張をほぐし、関節の可動域を維持するストレッチも重要です。

簡単なストレッチ例

  • 首をゆっくりと左右に回す
  • 肩を上下に動かす
  • 手首・足首をくるくると回す
  • 床や椅子に座ったまま背筋を伸ばす

ストレッチは朝起きた時や就寝前に行うと効果的です。痛みを感じない範囲でゆっくりと動作し、呼吸を止めないように注意しましょう。

「続けられる」ことを優先する考え方

リハビリで最も大切なのは継続することです。無理をせず、その日の体調に合わせて運動量を調整して、長期間続けられるよう意識しましょう。

  • 毎日同じ時間に行う必要はない
  • 体調が優れない日は休んでもよい
  • 少しずつでも何かしら体を動かす
  • 楽しみながら行える範囲で続ける

自宅で行う場合は、専門的で負荷の高い運動よりも、日常生活の延長として行える軽い運動の方が継続しやすく、結果的にリハビリの効果が期待できます。

運動の前後に注意すべきこと

安全に運動を行うために、準備とケアを怠らないようにしましょう。

運動前の準備

  • 体調の確認(熱、血圧、痛みの有無)
  • 適切な服装への着替え
  • 周囲の安全確認

運動後のケア

  • 水分補給
  • 疲労感や異常の有無をチェック
  • 必要に応じて休息

退院後しばらくは、ご自身も気をつけるのですが、だんだんと運動前の準備や、終わった後のケアがおろそかになりがちです。ぜひ、ご家族や周囲の方が、着替えをすすめたり、水分をとるよう声がけをしたりしてください。時には「毎日続けるのは大変ですよね」「少しずつ、力強くなっている感じがするよ」と、共感や応援をことばにして伝えると、モチベーションアップにもつながります。

次では、運動を続けるために家族ができるサポートについて、解説します。

家族ができるサポートの工夫

本人の「できる力」を尊重する

家族としては心配になり、つい何でも手を貸したくなりますが、本人ができることまで代わりに行ってしまうと、かえって回復を遅らせてしまう可能性があります。

「自分でできることは自分で行う」という自立支援の視点を大切にし、本人の意欲や能力を信じて見守るのが重要です。転倒リスクがあることを十分に理解し、咄嗟の補助や、万が一の転倒に備えての対処を心得た上で、時間がかかっても本人のペースで行えるよう配慮しましょう。

声かけや励ましが継続のカギに

日々の声かけは、本人にとって大きな励みとなります。「今日も運動頑張っていますね」「調子が良さそうですね」といった前向きな言葉は、継続する意欲を支えます。

ただし、過度な期待やプレッシャーを与えないよう注意し、本人の気持ちに寄り添った声かけを心がけてください。体調が優れない日には「今日はゆっくり休みましょう」という言葉も必要です。

一緒に行うリハビリや散歩など、コミュニケーションを兼ねた支援

運動をひとりで行うと、最初は意欲的に取り組んでいても、時間が経つにつれて億劫になり、ついついサボってしまいがちです。家族が一緒に参加すれば、楽しみながら続けられます。

  • 一緒に軽い体操をする
  • 短い距離の散歩に付き添う
  • 運動の様子を見守り、褒める
  • 体調の変化を一緒に記録する

運動やリハビリを通じて対話も増え、家族との絆も深まり、回復への意欲も高まります。

不安や異変を感じたら医療・介護職と早めに相談

家族だけで判断に迷うことがあれば、遠慮なく専門家に相談しましょう。小さな変化でも、専門的な視点から適切なアドバイスを受けることで、安心して介護を続けることができます。

「こんなことで相談してもよいのだろうか」と遠慮する必要はありません。早めの相談が、より大きな問題を防ぎます。家族のサポートと併せて、地域の専門的なサービスも上手に活用していきましょう。

介護サービスや相談先を活用しましょう

地域包括支援センターやケアマネジャーの役割紹介

地域包括支援センターは、高齢者とその家族の総合的な相談窓口として機能しています。介護サービスの利用方法、健康管理、生活上の困りごとなど、幅広い相談に応じてくれます。

ケアマネジャーは、個別のケアプランを作成し、必要なサービスを調整する専門職です。本人の状態や希望に応じて、最適なサービスの組み合わせを提案してくれるため、退院後の生活設計において心強いパートナーとなります。

通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリの利用も視野に

自宅でのセルフケアに加えて、専門的なリハビリテーションサービスの利用も検討してみましょう。

通所リハビリ(デイケア)

  • 専門スタッフによる個別リハビリ
  • 他の利用者との交流による刺激
  • 家族の介護負担軽

訪問リハビリ

  • 自宅での環境を活かしたリハビリ
  • 移動の負担がない
  • 個別性の高いプログラム

通所リハビリは、家族以外の人と交わる良い機会にもなりますね。また、訪問リハビリは移動が難しい状況でも利用しやすいのがメリットです。本人の状態や家庭の事情に応じて、上手に活用しましょう。

医療・福祉の専門職を頼る大切さ

ひとりで抱え込まず、専門職の力を借りることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、適切な支援を受けることで、本人も家族もより良い生活を送ることができます。

医師、看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士など、それぞれの専門性を活かしたチームケアが、退院後の生活を支える基盤となります。支援体制を整えながら、安心できる日常生活を築いていくことが大切です。

焦らず少しずつ「快適な日常へ」

退院後の生活において最も大切なのは、本人の「できる力」を最大限に活かしながら、安全で快適な日常を築くことです。

無理をせず、少しずつ生活リズムを整え、適度な運動を続けていけば、だんだんと生活の質は向上していきます。焦る必要はありません。一歩一歩、着実に歩んでいきましょう。

家族のサポートも重要ですが、完璧な介護をめざす必要はありません。専門家の力やさまざまな支援を利用しましょう。たとえば、ALSOK介護では「あんしんヨガ」や「あんしん体操」をYouTubeで配信していますし、お近くに施設があれば仲間と一緒に楽しく運動やセラピーを受けることができます。

退院後の新しい生活は確かに不安も伴いますが、適切な準備と支援があれば心配いりません。本人の回復を信じ、家族が寄り添いながら、専門家の力や支援を活用し、温かい日々を築いていってくださいね。

参考:

地域で安心して自分らしく老いることのできる社会づくり/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/1-04_03.pdf

入院前の場所・退院後の行き先/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/nyuuinmae.pdf