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老人ホームへの差し入れで喜ばれるもの・避けるべきものとは?

老人ホームに入居している家族への面会は、それだけでも喜ばれるものですが、差し入れがあると、より気持ちが伝わりやすくなります。差し入れは単なる贈り物ではなく、大切なコミュニケーション手段のひとつなのです。ただし、施設には独自のルールや制限があり、内容によってはトラブルや健康被害につながる可能性もあります。この記事では、老人ホームへの差し入れにおける基本的なマナーや喜ばれる品物、注意すべき点についてわかりやすく解説します。

老人ホームに差し入れはできる?知っておきたいポイント

差し入れは基本的にOK。事前に施設へ相談をしておこう

老人ホームでは基本的に差し入れが可能ですが、施設ごとのルールや入居する家族の健康状態に配慮が必要です。特に食べ物は、食事制限やアレルギー、嚥下機能の低下によって危険を伴うことがあります。

たとえば、水分が多く飲み込みにくい果物(スイカやブドウなど)は誤嚥のリスクがあります。差し入れを選ぶ際は、必ず事前に施設へ相談しましょう。

差し入れは家族のつながりを深めるコミュニケーションツール

差し入れは、単に物を届ける行為にとどまりません。「会いに来てくれた」という実感を抱きやすく、入居する家族の心をあたたかくしてくれます。特に高齢者は孤独を感じやすいため、顔を見て手渡しする行為そのものが、大きな心の支えになることもあります。

さらに、差し入れをきっかけに過去の思い出や季節の話題を共有できれば、生活に彩りが加わるだけでなく、認知機能の維持や精神的な安定にも良い影響を与えるとされています。

差し入れで喜ばれる定番アイテム

食べ物

差し入れで人気なのは食べ物ですが、入居者の健康状態に配慮しましょう。ゼリーやプリン、ミキサーでなめらかにした果物など、やわらかく飲み込みやすいものが適しています。またノンカフェインの飲料はどなたでも安心して楽しめます。なお、食中毒予防の観点から、家庭で調理したものや開封済みの食品を禁止している施設もあるため、それらの食べ物は避け、未開封で保存しやすいものを選びましょう。

家族の写真や手紙

食べ物以上に心に残るのが、家族からの写真や手紙です。たとえば、孫の成長を伝える写真や手書きのメッセージは、入居者の喜びや励みにつながり、何度も見返すことで心の支えにもなります。最近ではスマートフォンやタブレットで動画メッセージを届ける方も増えていますが、手に取って見られる紙の写真や手紙のような“アナログな贈り物”には、今も変わらない魅力があります。

職員と共有できる個包装のお菓子も

施設の職員と一緒に楽しめるように個包装されたお菓子を差し入れるケースもあります。入居者が「みんなで分ける」という体験を通じて、人とのつながりを感じるきっかけになるため、こうした差し入れは好まれる傾向にあります。ただし、すべての施設でこのような共有が認められているわけではありません。施設ごとにルールが異なるため、入居施設のルールを確認しましょう。

差し入れがトラブルを生む?注意したい3つのポイント

持ち込みができない差し入れ

多くの老人ホームでは、一定のルールのもとで差し入れが認められていますが、施設によっては感染症対策や衛生管理、事故防止の観点から差し入れに制限を設けている場合があります。とくに新型コロナウイルスの流行以降は、対面での面会や飲食物の持ち込みについて、運用を一時的に厳格化する施設も増えました。

ただし、すべての差し入れを全面的に禁止している施設は少数で、ほとんどの施設では条件付きで受け入れを行っているのが実情です。たとえば、生ものや開封済みの食品、手作りの料理などは持ち込み不可とする一方で、未開封で賞味期限が明記された市販品であれば可とするケースが多く見られます。

他の入居者への配慮

差し入れを渡す際は、入居者本人だけでなく、周囲の入居者への配慮も大切です。たとえば、頻繁に高価な品を持ち込んでいると、他の入居者が不快感を抱くことがあります。「自分には誰も来てくれない」「隣の人ばかりが差し入れをもらっている」といった感情が、孤独感を強めてしまうかもしれません。なるべく目立たない形で渡すなど、周囲への気配りを心がけましょう。

職員に対する高価なものや金券

高級な品物や金券など、金銭的価値の高い差し入れは注意が必要です。他の入居者との間で不公平感を招くおそれがあります。また、施設によっては金銭や高額品の授受を禁止していることもあるため、事前にルールを確認しましょう。万が一盗難などのトラブルが起きた場合には、施設内の人間関係に疑念が生じ、入居者の生活環境に悪影響を及ぼすおそれもあります。

嚥下機能の低下に注意。思わぬ事故の原因に

在宅時の印象で判断しない

自宅で問題なく食べていた食品でも、入居後は嚥下機能が低下していることがあります。飲み込む力は加齢や体調により変化するため、「以前は大丈夫だったから」と安易に考えるのは危険です。

命にかかわる「誤嚥性肺炎」のリスク

食べ物や飲み物が誤って気道に入ると、誤嚥性肺炎を引き起こすおそれがあります。高齢者に多く、重症化すれば命に関わることも。特にパンやもちなどは避けた方が安心です。食品選びには慎重さが求められます。

誤嚥性肺炎の予防については、こちらの記事『誤嚥性肺炎を予防するために高齢者と家族ができること』を併せてご覧ください。

職員との連携が大切

差し入れに迷ったときは、施設職員に相談しましょう。入居者の嚥下状態やアレルギー、制限食の有無を把握しているのは職員です。家族だけで判断せず、職員と連携することで、安心して喜ばれる差し入れができます。

差し入れ前に毎回必ず確認すべき3つのポイント

1.施設のルール

老人ホームでは、施設ごとに差し入れに関するルールが定められています。感染症の流行や季節の行事などによって、一時的に内容が変更されることもあるため、訪問のたびに「現在のルールはどうなっていますか?」と確認することが大切です。特に初めての訪問や、久しぶりに面会する際は、事前に電話で問い合わせておくと安心です。

2.本人の健康状態や体調変化

差し入れは、入居者の健康状態や体調に応じて選ぶことが大切です。季節の変わり目や体調を崩しやすい時期には、普段は問題のない食品でも合わなくなることがあります。可能であれば、事前に施設へ連絡し、食事制限やアレルギーの有無を確認しておきましょう。職員から最近の様子を聞いておくと、差し入れを選ぶ際の参考になります。

3.食品の保存環境や季節要因にも注意

差し入れは、食品の種類だけでなく、保存環境や持ち運び時の温度管理にも注意が必要です。たとえば、夏場は冷蔵が必要な食品は避け、冬場は冷えすぎて食べにくくならないよう配慮しましょう。

生ものや傷みやすい食品よりも、個包装で常温保存ができる衛生的なアイテムが安心です。選ぶ際は、「安全に届けられること」「施設で保管しやすいこと」を意識するとよいでしょう。

老人ホームへの差し入れは、入居者の笑顔を引き出し、心の支えとなる大切なコミュニケーションのひとつです。しかし、入居者の健康状態や施設ごとのルールを無視した差し入れは、思わぬトラブルやリスクを招く可能性があります。

大切なのは、事前の確認、家族や他の入居者への配慮、そして安全性への意識です。これらのポイントを押さえることで、差し入れはより安心で喜ばれるものになり、入居者の毎日に温かさと安心を届けることができます。