高齢者におすすめの補聴器。種類・選び方・補助金制度まで解説
「聞こえにくいな」と思ったら。加齢による聞こえの変化と補聴器の必要性
年齢とともに聴力が低下することを加齢性難聴といいます。聴力の低下は40代から少しずつ始まり、多くの人が60歳頃に自覚します。加齢性難聴は、内耳にある有毛細胞の劣化によって起こると考えられています。この有毛細胞は音を電気信号に変換する役割を担っていますが、一度減少すると再生しません。高い音から聞き取りにくくなっていく特徴があるため、電子音や女性・子供の声が聞き取りづらくなります。
加齢性難聴の初期症状には、次のようなサインがあります。
- テレビの音量を以前より上げるようになった
- 電話の着信音や電子音に気づかない
- 複数の人が話している場面で会話が聞き取りにくい
このような症状が見られたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
認知症との関連性
近年「難聴は認知症のリスク要因になり得る」という認識が広まっています。難聴があると、音として脳に伝わる情報が減ってしまうため、脳の働きが衰えやすくなるほか、コミュニケーションを取らなくなり、結果的に認知機能の低下につながる可能性があります。
補聴器による聞こえのサポートは、このような認知機能の低下を防ぐ効果も期待されています。
「年だから仕方ない」とあきらめず、適切な対応をすることが生活の質を保つことにつながります。
それでは次に、どのような補聴器があるのか、種類と特徴を見ていきましょう。
高齢者におすすめの補聴器とは?種類と特徴をわかりやすく解説
補聴器には、形状や機能によっていくつかのタイプがあります。主な2つのタイプをご紹介します。
耳かけ型補聴器
- 耳の後ろに本体をかけて使用するタイプ
- 軽度から重度まで幅広い難聴に対応
- デザインやカラーが豊富
- 操作ボタンが比較的大きく扱いやすい
耳かけ型には、ハウリングが起こりにくい、機能が多い、対応できる難聴程度が軽度から重度まで幅広いというメリットがあります。ハウリングとは、補聴器から「ピーピー」という不快な音が出る現象です。
ただし、メガネやマスクと同時使用すると邪魔に感じることもあります。
耳あな型補聴器
- 耳の穴に入れて使用するタイプ
- 目立ちにくく外見を気にする方におすすめ
- オーダーメイドで耳の形にぴったり合わせられる
- メガネやマスクの邪魔にならない
耳あな型補聴器は、ひとりひとりの耳の形や聴力に合わせて作るオーダーメイドの補聴器です。耳あなに収まるため、メガネやマスクをかけている際も邪魔になりません。コンパクトで目立ちにくいため、補聴器使用への抵抗感を軽減できます。
一方で、小型のため操作が難しかったり、紛失時に見つかりにくかったりするデメリットもあります。
他にもポケット型やメガネ型などもありますが、現在ではあまり流通していません。基本的には「耳かけ型」「耳あな型」から選ぶことになるでしょう。とはいえ、耳かけ型も耳あな型も、それぞれ、さまざまな種類があります。
個人の好みもありますし、実際に使用してみないと「合う・合わない」がわかりづらいです。この後の選び方でも説明しますが、レンタルなどで試してみるのがおすすめです。
充電式と電池式の違い
充電式は専用ケースに置くだけで充電でき、電池交換の手間がありません。電池式は電池さえあればどこでも使えます。ご自身の生活スタイルに合わせて選びましょう。
雑音防止機能とハウリング防止機能
最近の補聴器には、周囲の雑音を軽減して会話を聞き取りやすくする機能や、ハウリングを防ぐ機能が搭載されているものが多くあります。
高齢者向け補聴器の選び方のポイント5つ
補聴器を選ぶ際には、以下の5つのポイントを押さえることが大切です。
1:まず耳鼻咽喉科受診が大切
補聴器購入前に、必ず耳鼻咽喉科を受診しましょう。聞こえにくさの原因が治療可能な病気である場合もあります。医師による診断で聴力レベルを正確に把握し、適切な補聴器選びにつなげます。
2:聴力レベル、生活環境、使用シーンなどを考慮
聴力レベルだけでなく、日常生活でどのような場面で困っているのかを考えましょう。家族との会話、外出時の安全、趣味の集まりなど、使用場面によって必要な機能が変わります。
3:日々の使いやすさや管理のしやすさも大事な選択基準
補聴器は毎日使うものですから、装着のしやすさ、操作の簡単さ、お手入れのしやすさも重要です。指先の細かい動作が苦手な方は、大きめのボタンがある耳かけ型やポケット型が扱いやすいでしょう。
4:試聴やレンタルサービスの活用
補聴器の購入前に試聴やレンタルサービスを利用しましょう。実際に使ってみることで、聞こえ方や装着感、使い勝手を確認できます。
多くの販売店で無料貸し出しを行っていますので、数週間試してみることをおすすめします。
5:補聴器購入後のサポートを確認
補聴器は購入後の調整やメンテナンスが大切です。認定補聴器技能者が常駐している販売店なら、継続的なサポートが受けられます。アフターサービスが充実しているかを確認しましょう。
経済的な負担も気になるところですね。次は補助金制度について、詳しくご紹介します。
補聴器購入の補助金・購入サポート制度
補聴器は決して安い買い物ではありませんが、自治体によっては購入を支援する補助金制度があります。また、一定の条件を満たせば医療費控除の対象にもなります。
自治体独自の高齢者補聴器購入助成
日本補聴器販売店協会の調査(2023年)では、補聴器購入費助成制度を実施している自治体は全国で237あります。
たとえば、品川区では、加齢により聴力機能が低下した高齢者に対し、補聴器の購入に要する費用のうち、72,450円を上限に助成しています。
品川区の場合、助成対象者は以下の条件を満たす方です。
- 区内に住所を有する満65歳以上の方
- 聴覚障害による身体障害者手帳の対象とならない方
- 耳鼻咽喉科の医師から基準を満たす証明を受けた方
自治体によって条件や助成金額は異なりますが、まずは一度、お住まいの自治体に助成制度があるか、問い合わせてみましょう。
医療費控除の活用方法
補聴器の購入費用は、医師が診療や治療のために必要と判断し、「補聴器適合に関する診療情報提供書」を作成した場合、医療費控除の対象になります。医師の診療情報提供書、補聴器の領収書などを保管し、確定申告を行いましょう。
自治体の補助金制度と医療費控除は併用できる場合もありますので、両方を活用することで負担を軽減できます。
最後に、これまでの内容をまとめて、聞こえのケアの大切さを改めて考えてみましょう。
聞こえのケアで豊かな毎日を守りましょう
加齢に伴う聞こえの変化は自然な現象ですが、適切に対応することで、大切な人とのコミュニケーションを守り、生活の質を保つことができます。
「ヒアリングフレイル」が注目されていますが、これは聴覚機能の低下によるコミュニケーションの問題やQOL低下などを含む、身体の衰えのひとつです。聞こえにくさを放置すると、社会とのつながりが薄れ、心身の健康に影響を及ぼす可能性があります。
「最近、聞こえにくいな」と感じたら、それは補聴器を検討する大切なサインかもしれません。
まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門家のアドバイスを受けることから始めましょう。補聴器は慣れるまでに時間がかかることもありますが、あきらめずに使い続けることで快適に使えるようになります。
自治体の補助金制度や医療費控除も上手に活用しながら、ご自身に合った補聴器を見つけてください。聞こえのケアは、豊かな毎日を守るための大切な一歩です。