介護用前開き肌着の選び方。介助しやすく快適に着られるポイントを解説
介護で前開き肌着が選ばれる理由
介護の場では、毎日の着替えは本人にも家族にも大きな負担となります。腕を上げたり、背中側に腕を回すような動作は、高齢者や体が不自由な方にとって痛みや不安を伴いやすいものです。そうした負担を減らすために選ばれているのが、前開きタイプの肌着です。
体の前側で開閉できる構造のため、背中に腕を回したり腕を上げたりする動作を最小限にでき、寝たままの姿勢でもスムーズに着替えられるのが特徴です。介助者にとっても、本人の体を持ち上げたり回したりする必要が少ないため、腰や腕への負担が軽減し、安全に着替えを行えます。つまり、前開き肌着は「着る人にも介助する人にもやさしい構造」であることが、広く支持される理由です。
介助者と本人、双方の負担を減らす
前開き肌着は、ボタン・スナップ・面ファスナー(マジックテープ)などの留め具を前面に配置しているため、介助者が利用者の片側からでも着せられるのが大きな特長です。背中側に縫い目や留め具がないので、寝たままの状態で片腕ずつ袖を通し、前を閉じるだけで着替えが完了します。
とはいえ、完全に仰向けのまま着替えられるわけではありません。肩や上半身を少し横に傾けたり、半身を起こしたりといった軽い体の向き変えは必要です。それでも、頭からかぶるタイプの肌着のように大きく体を起こしたり、何度も寝返りをさせたりする必要がないため、体力が低下した高齢者にも負担が少ない着替え方法と言えるでしょう。
ALSOK介護でも、前開き肌着の着替え手順を記事で紹介しています。
ALSOK介護職員の声
「マジックテープは便利だが、こまめに掃除をしないと細かな埃がたまりやすく、メンテナンスに手間がかかる」「前開きの肌着は着脱が本当に楽で、(自社の介護施設に)入所する高齢者のほとんどが選ばれている」
医療ケアやプライバシーにも配慮
介護を受けている方の中には、病気やけがの治療のために医療的なケアを継続している人も少なくありません。点滴やカテーテルの管理、褥瘡(じょくそう)ケアなど、日常の介助に加えて医療処置が必要な場面でも、前開き肌着は重宝されます。
ボタンやファスナーを部分的に開くだけで、処置を行う部位(腕・胸・お腹など)にすぐ手が届くため、服を大きく脱がせる必要がありません。このため、身体を冷やさずに清拭や消毒ができ、清潔を保ちやすく感染予防にもつながります。また、胸元や腹部をすべて露出させずにケアができることで、プライバシーの確保と安心感を両立できる点も評価されています。
皮膚トラブルの防止にも
高齢者の肌は乾燥しやすく、わずかな摩擦や圧迫でも褥瘡につながることがあります。褥瘡の予防では、圧迫の軽減に加えて摩擦やずれへの対策が重要とされています。
前開き肌着は背側に当たりの少ない設計が多く、寝て過ごす時間が長い方でも擦れを起こしにくいとされます。さらに、縫い目を外側に出した「外縫いタイプ」や、タグをプリントにした「タグレス仕様」など、肌に触れる段差やタグの当たりを減らし、汗や蒸れ、静電気による不快感を抑える狙いがあります。
また、縫い代を平らに仕上げる「フラットシーム加工」や、吸湿速乾・抗菌防臭素材を採用した製品も存在します。こうした工夫は主に快適性と肌刺激の軽減を目的としており、介護用品メーカー各社が現場の声を反映して改良を進めています。
介助のレベルにあった肌着の選び方
介護肌着は「どの程度の介助が必要か」で選ぶべき仕様が異なります。介助度別のおすすめを紹介します。
ご自身で動ける方・見守り中心の方に
スナップボタンや軽量ボタンタイプが扱いやすく人気です。近年は弱い力でも留まる軽量スナップや、指先が不自由な方でもつまみやすい大きめボタンが登場しています。家庭用洗濯機で繰り返し洗っても型崩れしにくく、日常着として自然に使えるのも魅力です。
一部だけ介助が必要な方に
ボタン操作が難しい方には、面ファスナー(マジックテープ)タイプが最適です。片手でも開閉でき、介助者の動きもスムーズになります。ただし、面ファスナーは繊維を傷めやすいため、洗濯時には留めてネットに入れるなどの工夫が必要です。介護の現場からは、「夜間など暗い中でも着替えやすい」「介助時間が短縮できる」といった声が上がっています。
介助が必要な方・寝たまま着替える方に
寝たままの姿勢で着替えができるフルオープン型や斜め開きタイプがおすすめです。胸元から裾、または肩から脇腹にかけて大きく開く構造になっています。ただし、まったく体を動かさずに着替えられるわけではなく、背中に肌着を敷き込む際には、肩や上半身を少し横に傾ける、半身を起こすといった動きが必要です。
背中側に手を回す必要がないため、介助者は一方向から安全に作業でき、腰への負担や本人の体のねじれを防ぐことができます。
ALSOK介護職員の声
「介護施設に入所される場合、乾燥機を利用することが多いので耐久性のあるものが好ましいです」
利用者の状態や季節に合わせた前開き肌着の工夫
性別や体型への配慮
女性向けの肌着は胸元が浅く、丈がやや長めで腰回りを冷やしにくい設計。男性向けは肩や脇の動きを妨げず、フィット感の高いカッティングになっています。ユニセックスデザインの肌着も増えており、「施設で共有しやすい」「在庫管理がしやすい」といった声もあります。
季節ごとの素材選び
春夏は、通気性に優れたメッシュ生地や吸汗速乾素材が快適です。汗をかいてもすぐ乾くため、蒸れやにおいを防げます。秋冬は、裏起毛タイプや遠赤外線効果のある保温素材を選ぶと安心です。乾燥機対応の製品を選べば、洗濯後すぐに再利用でき、寒い季節も清潔さを保ちやすくなります。
介護用前開き肌着の種類と特徴を比較
| タイプ | 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
|
両面ファスナー型 |
前身頃をマジックテープで留める | 片手で操作しやすく介助も短時間 | 洗濯で劣化、ごみ付着、音や肌刺激に注意 |
| スナップボタン型 | 前立てをスナップで留める | 閉め忘れ防止、見た目が自然 | 指先の力が弱い人に向かない、金属は肌当たり注意 |
| ファスナー型 | 斜め・全開にできる | 開口が大きく介助や処置が容易 | 皮膚を挟むリスク、金属は重さや冷感あり |
| ロンパース型 | 上下つなぎ+股下スナップ | 自脱衣防止・失禁ケアに有効 | トイレ不便、拘束とならない配慮必須 |
| 細部の工夫 | 袖口伸縮・テープ幅・抗菌加工など | 肌当たりを和らげ衛生的 | 製品差が大きく、洗濯・乾燥機耐久は要確認 |
着脱のしやすさだけでなく、洗濯・乾燥のしやすさも肌着選びに重要なポイント
介護現場では着脱のしやすさだけでなく、洗濯・乾燥のしやすさも肌着選びに重要なポイントとなります。
購入前には、胸囲・肩幅・着丈・股下といった採寸の基本を押さえ、洗い替えを考えた枚数、施設洗濯・乾燥機対応かどうか、名入れによる識別対策などを確認しておきましょう。
これらを事前に整理することで、利用者にも介助者にも安心・快適な衣類選びができます。
サイズ選びの基本を押さえる
胸囲やウエスト、ヒップなどを基準に、少し余裕を持って選ぶのが基本です。特に寝たまま介助を行う場合、ぴったりサイズは動かしにくく、肌トラブルの原因になることがあります。体型や動きに合わせて、無理のないサイズを選びましょう。
必要枚数の目安
介護用肌着は、季節や洗濯頻度に応じて複数枚を用意しておくと安心です。一般的には、春夏は3〜4枚、秋冬は5〜6枚程度を備えておくとよいとされています。ただし、必要枚数は生活スタイルや利用環境によって異なるため、あくまで目安として考えましょう。
名入れ・識別で紛失防止
洗濯表示と乾燥機対応
通販で購入する場合や試着できないとき
通販で購入する場合は、返品・交換の条件を必ず確認しておきましょう。開封後の返品不可とされるケースも多いため、複数サイズを試す場合は開封順や保管方法に注意が必要です。