老人ホームの入居者に適した服装とは?
服を選ぶポイントと注意点
「老人ホームではどんな服を着ればいいのだろう?」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
老人ホームや介護施設での服装は、基本的に自由です。しかし、快適に過ごすには、体の状態に合った服を選ぶなど、いくつか知っておきたいポイントがあります。
この記事では、老人ホーム入居者に「おすすめの服装」と「避けたほうがいい服装」、さらに、「服装選びの注意点」について詳しく解説します。最後までお読みいただくと、老人ホームで心地よく過ごすための服装選びができるようになるはずです。
老人ホームの入居者の服装は基本的に自由
施設からの指示がない限り、基本的にどのような服装でも問題ありません。
普段から着慣れている服や、着心地の良い服、お気に入りの服など、入居する本人が快適に過ごせる服装を選びましょう。
ただし、老人ホームや介護施設は、ほかの人と生活を共にする場所です。そのため、周囲の方への最低限の配慮は必要です。たとえば、派手すぎる服装や、露出の多い服装などは、周囲の方を不快にする可能性があり、おすすめできません。
老人ホームの入居者が避けた方がいい服装
老人ホームで入居者が避けた方がいい服装を、具体的にご紹介します。
①裾や袖が長い服
裾や袖が長い服は、転倒のリスクを高めたり、日常生活の動作を妨げたりするため、おすすめできません。
裾が長いズボンやスカートは、本人はもちろん、ほかの入居者の方が足を引っかけて転倒する恐れがあり、危険です。車椅子を利用している方は、車輪に裾が巻き込まれる事故につながる可能性があります。
また、袖が長い服は、食事のときに汚してしまったり、作業中に物にひっかけたりするなど、日常動作がしにくくなるので、注意が必要です。
②着替えに時間がかかる服
着替えに時間がかかる服は、本人だけでなく、介護するスタッフにとっても大きな負担となります。
着替えに時間がかかる服(一例)
- ボタンやファスナーが多い
- デザインが複雑
- 伸縮性がない
- 素材が硬い
認知機能が低下していたり、肩や腕の可動域が狭まっていたりする方は、着替えに時間がかかります。一人で着替えができない方は、介護スタッフが着替えさせやすい服を選ぶのも、一つの手です。
着替えやすい服については、こちらの記事『着替えやすい服を選ぶのがポイント!着脱介助をスムーズに行うコツ|豆知識・コラム』で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。③高価な服や思い入れのある服
老人ホームでは、高価な服や思い入れのある服を着るのは避けた方がいいでしょう。
どんなに大切に着ていても、服が汚れたり、破れたりするリスクがあるからです。
自分で汚したり、破損したりするのは、ある程度納得できるかもしれません。しかし、老人ホームは、共同生活する場所です。ほかの入居者との接触によって、服が傷んでしまうことも考えられます。特に、本人にとって思い入れのある服の場合、大きなショックにつながる可能性があります。
④洗濯に手間がかかる服
洗濯に手間がかかる服は、老人ホーム生活に向きません。
老人ホームでは、入居者または介護スタッフが洗濯を行うことがあるからです。
洗濯に手間がかかる服(一例)
- 高価なブランド服
- デリケート素材の服
- 手洗いが必要な服
- 乾燥機が使えない服
家庭の洗濯機や乾燥機が使えない素材の服は、洗濯や乾かすのに時間がかかるので避けた方がいいでしょう。
老人ホームで着る服を選ぶポイント
老人ホームで着る服を選ぶときにおさえておきたい4つのポイントについて解説します。
①リラックスできる
リラックスできる服を選ぶと、ストレスが少なく、心身ともに心地よく過ごせます。
肌触りの良い自然素材の服や、ゆったりとしたデザインの服を選ぶといいでしょう。
また、普段から着慣れている服は、自宅にいるような安心感を与えてくれるのでおすすめです。
②着替えやすい
着替えやすい服を選ぶと、「自分で着替えよう」という意欲が高まり、身体の機能維持につながります。
ボタンやファスナーが少ない服や、伸縮性のある素材の服は、一人で着脱しやすいので特におすすめです。もし、一人での着替えが難しい場合は、前開きの服を選ぶといいでしょう。介助するスタッフにとっても、着替えがスムーズになり、本人の負担も減らすことができます。
③動きやすい
老人ホームでの生活をより楽しむためには、動きやすい服を選ぶといいでしょう。
というのも、老人ホームでは、リハビリや散歩、レクリエーションなど、体を動かす機会が多いからです。
伸縮性のある素材や袖口がゴムになっている服などを選ぶと、体の動きを妨げず、自由に活動することができます。スウェットやジャージのように、足首まで隠れる丈のズボンを選ぶと、転倒防止にもつながります。
④体温調節がしやすい
老人ホームでは、体温調節しやすい服を選ぶのも大切なポイントです。
老人ホームはほかの人と共同で生活する場所なので、自宅のように室温を自由に調節できない場合があります。
加齢とともに体温を調節する機能が弱まり、「年中寒さを感じる」という方も少なくないようです。室温の変化に柔軟に対応するには、気軽に羽織ったり脱いだりできる服やアイテムを選ぶといいでしょう。
体温調節がしやすい服・アイテム
- Tシャツ
- 長袖のカットソー
- 薄手のセーター
- 長袖のシャツ
- カーディガン
- ベスト
- フリースのジャケット
長袖のカットソーの上にカーディガン、Tシャツの上に長袖のシャツなど、重ね着をすると、体温調節がしやすくなります。
服装選びの注意点
老人ホームで着用する服装を選ぶときの注意点を2つご紹介します。
①本人の好みを尊重する
老人ホームでの服装選びにおいて、最も大切なのは、本人の好みを尊重することです。
素材や色、デザインなど、本人が気に入ったものを選びましょう。好みの服を着ることは、自己肯定感を高める効果があり、老人ホームでの生活を快適にするためにとても重要です。
子ども世代から見ると、「着古した服は恥ずかしい」「毛玉が多い服はみっともないので、新しい服を買うべき」などと思うかもしれませんが、服装の無理強いはやめましょう。
普段から着慣れた好みの服装を選ぶことで、より穏やかな時間を過ごせるはずです。
集団生活にふさわしくない、事故につながりやすいなどの服でなければ、どんな服装でも構いません。本人の気持ちに寄り添いながら、心地よく過ごせる服装を選びましょう。
②本人の身体状態に合ったものを選ぶ
服装を選ぶときは、必ず本人の身体状態に合ったものを選びましょう。
いつまでも元気でいるためには、「できることは、できるだけ自分でする」のが大切だからです。
本人の身体状態に合っていない服を選ぶと、以下のようなリスクがあります。
- 着替えに時間がかかる
- ケガをしやすい
- 自立心を維持しにくい
体の可動域が狭くなっている方の場合は、伸縮性が高く、ゆったりとしたサイズの服を選ぶと、スムーズに着脱できるでしょう。
老人ホームの服装|よくある2つの質問
最後に、老人ホームでの服装に関するよくある2つの質問にお答えします。
服や下着は何枚あればいい?
一般的に、3日程度の衣類があれば十分とされています。
しかし、本人の生活スタイルや、施設の洗濯頻度や部屋の収納スペースなどによって異なるので注意が必要です。
| 毎日洗濯する施設 | 2~3枚の着替えがあれば、毎日清潔な状態で過ごせる |
|---|---|
| 週2回洗濯する施設 | 3~5枚の着替えがあると、万が一汚れても安心 |
| 失禁しやすい方 | ズボンとパンツが5枚程度あると、安心して交換できる |
「着替えはたくさんあるほうが安心できる」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、あまりに多すぎると、管理が大変になります。
本人の生活スタイルや、施設の環境に合わせて柔軟に対応するのがベストです。施設のスタッフと相談しながら、最適な量の衣類を用意しましょう。
パジャマは用意したほうがいい?
睡眠時にパジャマの着用が義務付けられている施設以外は、本人の就寝時のスタイルによって決めましょう。
自宅で就寝時にパジャマを着用している方は、老人ホームでもパジャマを着ることで、より快適に睡眠をとることができます。一方、普段からパジャマ以外の格好で寝ている方は、必ずしもパジャマが必要というわけではありません。
パジャマの枚数は洗濯頻度を考慮して決めましょう。一般的に2~3枚あれば十分とされています。
服装選びに迷ったら、施設スタッフに相談を
老人ホームでの服装選びに迷ったら、施設スタッフに相談するといいでしょう。特に、異性の服装選びは難しいもの。本人が快適に過ごすためにも、施設のスタッフに相談してアドバイスをもらいながら用意をすすめると安心です。