小規模多機能型居宅介護みんなの家・稲城長沼
【一日一心】“満点寿司デイ”
寿司がつないだ気づき
YOYO、みなさん。
こんにちは。みんなの家・稲城長沼の料理長、王です~
この間、子どもを連れてあきる野の回転寿司へ行ったときのことです。
目の前で楽しそうに寿司をほおばる子どもを見ながら、ふと妻がこう言いました。
「お寿司って、日本人にとってどんな感情なんだろうね?」
「今の若い世代にとって、ちょっと疲れた日のご褒美とか、給料日が入ったときのプチ贅沢とか、誰を誘っても“無難で強いカード”って感じじゃない?」
確かに、その通りだと思います。
気軽に楽しめて、だけど少し特別で、誘えば喜ばれる。
いまの寿司には、そんな“日常のなかの小さな幸せ”が詰まっています。
そこで妻が続けてこう言ったのです。
「施設でお寿司レクをやるの? それって昭和世代とは全然違う感覚だよ。あなたの親が“餃子が好き”って言うのと、少し似ているのかもしれないね。」
その言葉を聞いて、私はハッとしました。
――確かに。
昭和20年前後を生きてこられた利用者様にとって、お寿司は今とはまったく意味が違う。
戦後の混乱がようやく静まり、人々が“日常”を取り戻し始めたあの時代。
お寿司はただの食べ物ではありませんでした。
家族が揃う特別な日。
平和が戻ってきたと感じられる瞬間。
一年のなかでも限られた、ごちそうの象徴。
「親父が給料日に買ってきてくれたんだよ」
「正月だけは兄弟みんなで寿司桶を囲んだんだ」
そんな思い出話を伺うたびに、車の中でも、レクリエーションの合間でも、
好きな食べ物を聞けば返ってくる答えは決まって“寿司”でした。
――お寿司は、利用者様の人生の一部になっているのだ。
外食の喜びをもう一度届けたい
そう気づいた瞬間、私たちは
「外出が難しい方にも、“外食の楽しさ”をもう一度届けたい」と強く思いました。
その想いから、施設全体を小さなお寿司屋さんに変えてしまうことにしました。
のぼりを立て、職員は法被を着て、カウンター風のテーブルをつくり、
握り寿司は手でひとつひとつ心を込めて。
準備の日から、職員の表情はまるで文化祭の前の学生のよう。
“喜んでもらえるかな”とワクワクしながら作業を進めました。
そして迎えた当日。
ドアを開ける瞬間、目に広がったのは寿司屋の服を着て、帽子を被っている僕の姿でした。
驚き、ほほえみ、そして懐かしさ。
「いやぁ…まさか寿司屋のカッコをして迎えに来てくれるなんて」
「昔のことを思い出したよ。お昼は楽しみだね」
笑顔が広がった寿司レク当日
普段食の細い方が、
「おいしい、おいしい」と何度もおかわりしてくださり、
97歳、98歳の方が15貫をぺろりと平らげる姿も。
そのたびに、まるで家族に食べてもらっているような嬉しさが胸に広がりました。
そして、当日来られなかった利用者様には、
私たちの“つながり弁当”を手にして職員がご自宅へ。
扉を開けて受け取ったときの「本当に来てくれたね!ありがとう!」が、そっと心を温めてくれました。
毎月28日「満点寿司デイ」誕生
初開催の大成功を受けて、毎月28日に継続することにしました。
縁起が良いとされる“8”が二つそろう日。
末広がりの幸せが、利用者様にも広がりますように——
そんな願いを込めて、この日を「満点寿司デイ」と名付けました。
お腹も満タン心も満点になれる、私たちの特別な一日です。
これからも続く“満点のひととき”